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2020.10.13

<映画:ロッキー・ホラー・ショー>  #ジム・シャーマン監督 #ティム・カリー主演 #スーザン・サランドン助演 #応援参加型上映 #カウンターカルチャー>

タイトルが入ります

 

 こんばんは。

 No Cinema, No Life.

 火曜日担当のツノムラです。

 

 10月中旬、秋深くなりました。もうすぐハロウィンですね。

 

 天真爛漫にコスプレをして、派手な特殊メイクを装って、街に繰り出す若者。

 

 

 羨ましくて、遠目で眺めながら、心静かに血が騒ぐ。

 

 もしも、もう少し若くて、自意識が邪魔をしなければ、同じ格好をして、

 

 あの輪の中に入りたい。

 

 いや、思いっきりハメを外して、揉みくちゃの群衆のカオスに飛び込みたい。

 

 羞恥心を忘れ去るぐらいまで飲んで、騒ぎたい。

 

 そんなこと、できるはずもない。

 

 「 密集と群衆が、郷愁になりつつある毎日 ♫ 」

 「 怯えと備えに心が、慣れつつある毎日 ♪ 」

 「 でも、正解の無い世界に、ショウガナイ毎日 ♫ 」

 

 下手なラップの韻を踏んでみました。話を戻します。

 

 マスクもコスプレと思えば、ニュー·ノーマルな毎日も気が楽になる。

 

 せめて、リモートでもいいから、ハロウィンみたいなカオスの群衆に飛び込んでハシャギたい。

 

 <できるんです!!>

 映画のなかの擬似カオスの世界へ。

 それも、B級な悪趣味でインモラルでロックンロールなカオスの世界へ。

 

 1976年公開のカルト映画『ロッキー·ホラー·ショー』が、それなのです。

 

 

 本作は、70年代にロンドン小劇場でヒットした戯曲をリチャード·オブライエンが映画用に脚本を書き換えて、あえて低予算でB級ホラー映画風に撮影した作品です。

 

 ジャンルで言えば、ロックミュージカル、ホラー、SF、LGBTQ、ラブコメの要素がごちゃ混ぜで、夢でうなされそうなアンバランスである。

 

 まるでかき氷に生肉を乗せて、鯖の味噌煮をトッピングしてメイプルシロップをたっぷりかけて、かき混ぜて食べるみたいな阿鼻叫喚だけど、病みつきになる味の映画です。

 

 なにせ映画冒頭から、ボンテージ姿のバイセクシャルの中年男がキメキメで踊る。

 

 妖艶に腰を振り、ピンヒールで付き人を蹴散らす。

 

 

 彼は、自分をトランスセクシャル星からきた異星人だと言い張る。

 

 彼の名は、フランクン·フルータ博士。

 

 彼は、遂に自分好みの金髪でマッチョな人造人間を作り上げたと自慢する。

 

 フランケンシュタイン博士を気取り、古城に籠り、夜な夜な、人造人間の製造実験に享楽している。

 

 

 紫のアイライン、カーマインの濡れた口紅、網タイツ姿のオッサンが、スクリーン越しに我々の目の奥を覗き込む。

 

 そして、目線を釘付けにして、こう問いかける。

 

 「うちのベイビー(マッチョな金髪の人造人間)のお披露目、夜会を一緒に楽しまないかい?」

 

 

 →「夜会をご一緒」にだって?” 

 →「どういうこと?」

 こちらは、驚愕し、身悶えする 。

 

 さらに、彼は観客の我々に、畳み掛けるように、こう訴える。

 「ベイビー、さあ、リラックスして」

 「人を外見で判断してはいけないよ!!」

 

 

 →「判断するする!」、「いや、俺も同じ穴のムジナか?」

 観ているこちらは、どうやって言葉を返したらよいかと恐れおののく。

 

 <みなさま、お気づきでしょうか?>

 本作は、ボケ倒すコント設定に対して、こちらは恐る恐るツッコミを入れる。

 

 いわゆる、コール&レスポンス、演者と観客が「掛け合う」、参加型の上映作品なのです。

 

 最近では、映画『ボへミアン·ラプソディー』でのフレディーが、ウェンブリー·スタジオで「ウェーオ」とコールして、劇場の観客が「ウェーオ、エオ、エオ」とレスポンスする「応援参加型の上映会」がヒットしました。

 

 その元祖が「ロッキー·ホラー·ショー」です。

 

 1976年の公開から40年以上たった今でも、世界のどこかの劇場のレイトショーで参加上映会が行われているほど、ロングランのカルト映画です。

 

 僕も90年代のロンドンで本作の参加型上映会に足を運んだことがあります。

 

 さすがにコスプレやメイクはできませんでした。

 

 左手にバケツ一杯のポップコーンを抱えて、右手でギネスビールを飲み干して、スクリーンに向かって叫ぶ。

 『Dammit(くそ)、Janet!!』

 『Asshole!!(スカタン)』

 『Slut!!(放送禁止用語)』

 

 そして、挿入歌の『タイムワープ』が流れると一斉に立ち上がって踊る。

 

 翌朝は二日酔いであまり覚えていない。

 

 

 さて、遅くなりました。

 

 今更ながら、本作のあらすじを簡単にご案内させてください(ネタバレは極力に避けます)。

 

 真面目青年のブラット(バリー·ボストウィック)と清純お嬢様のジャネット(スーザン·サランドン)は、恋愛経験がないまま単なるノリで婚約する。

 結婚の媒酌人のお願いに二人の高校時代の恩師スコット博士の自宅に車を走らせる。

 

 しかし、その道中にタイヤがパンクし、雷雨が収まらないなか立ち往生し、近くの古城の主人に一夜を泊めてもらえないかと頼み入る。

 

 古城の主人であるフルター博士(ティム·カリー)は愛想良く招き入れる。

 

 そして、今夜は広間で大披露宴があるので、洋服を着替えなさいと夜会へと誘い入れる。

 

 

 そこから、悪夢が始まる。

 

 この続きは、本作を是非にご覧ください。

 

 もし、早々に嫌悪を感じたら、残り90分は地獄です。

 鑑賞の続行をお勧めできません。

 

 バイブスが合えば、エロとグロがヒートアップして、忘れえぬB級コメディーの沼にはまります。

 

 狂乱と変態の向こう岸、後戻りできないルビコンの川を渡るのも悪くありません。

 

  本作の気になるポイントをご案内させてください。

 

 <1.緻密なシナリオ構成>

 本作のシナリオ構成は、9幕の舞台場面にそれぞれグラム·ロックやポップなどの楽曲が割り当てられている。

 

 一見して、それぞれの場面が、唐突で自分勝手な展開を雑に繋ぎ合わせたように見える。

 しかし、実は緻密で入念な脚本構成になっている。

 

 映画冒頭から細い伏線が張られ、終盤に向けてさらりと回収していく絶妙なシナリオ。俯瞰でストーリー展開の解説を語りかける学者老人がワイプで現れたり、ヒッチコックのサスペンスのように巧みである。

 

 さらに、役者陣の歌唱力とダンスは抜群である。

 

 ヒロイン役の清純派:スーザン·サランドンはとにかく、可愛かった。

 

 

 B級の雰囲気を猫かぶりしながら、実は超一級のミュージカル映画です。

 お勧めです。

 

  <2.カウンターカルチャー>

 同時代のアメリカン·ミュジカル映画、例えば、77年公開の『サタデー·ナイト·フィーバー』のディスコ物、78年公開の『グリース』の学園物とは対極的な作品です。

 

 ジョン·トラボルタの体育会的健全さ、オリビア·ニュートン=ジョンの清純可憐さを嘲笑うかのように、すべての登場人物が不道徳である。

 

 存在感が耐えられない軽さを装いながら、ハリウッドやブロードウェイなどのメイン·カルチャーに対抗するカウンターカルチャー静かなる闘志に感服します。

 

 その皮肉たっぷりとふざけたハイテンションが、現在のサブカルチャーに大きく影響しています。「大人計画」のウーマンリブのシリーズとか「劇団☆新感線」のお芝居もその系譜だと思います。

 

 2011年には、いのうえひでのりさんが演出、古田新太さんがフランクン博士の役で、劇団☆新感線の「ロッキー·ホラー·ショー」が大ヒットしました。

 

 

 <3.至宝のサウンドトラック>

 

 映画サウンドトラックも秀逸です。

 ミュージカル仕立ての全16曲が収録。

 

 7曲目の『HOT Patootie-Bless My Soul』のノリノリのオールディーズなロックンロールを歌うのは、あのヘヴィメタのミート·ローフです。

 エルビス·プレスリーを思わせるポッチャリのリーゼント髪型でした。

 

 劇中の挿入歌10曲目の「タイムワープ」のMTVを部屋で流していると、娘にUSJの「モンスター·ライブ·ロックンロール·ショー」を真似していると言われた。

 

 しかし、ユニバーサルのライブイベントで、古城の舞踏会でフランケンやビートルジュースが踊る世界観は、多分に本作の「タイムワープ」からの借り物だと思います。

 

 ユニ·モンのライブショーの元祖は『ロッキー ·ホラー·ショー』です。

 だと思います。

 

 

 それでは、また来週まで。

 おやすみなさい。