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2020.11.24

<映画:独立愚連隊西へ>  #岡本喜八監督 #フランキー堺と加山雄三 #immortal squad 不死身の舞台 #喜劇的平和的西部劇

タイトルが入ります

 

 こんばんは。

 No Cinema, No Life.

 火曜日担当のツノムラです。

 

 映画のブログを書いていて、何なんですが、最近は映画館に行けていません。

 

 iTunes、Netflix、Amazon、WOWOW、日本映画専門チャンネルなどの動画配信サービスの作品ラインナップが充実しているので(それも60年代以前の白黒映画のラインナップがとても充実しています)、ついそちらを見てしまいます。

 

 配信サービスの良いところは、監督さんとか俳優さんとかのくくりで、過去作品の特集が組まれている事です。

 

 

 

 例えば、「生誕百周年 三船敏郎特集」とか「ポン・ジュノ監督特集」、「岡本喜八監督特集」。さらに、雑誌『BRUTUS』の今月号(11月15日号)が「映画監督論」の特集なんです。

 

 監督別の作品紹介を読みながら、「なるほど!」と勉強しながら、映画配信サービスで過去作品を有料ダウンロードする。

 

 まさに雑誌と配信サービスのメディアミックスによるビジネス戦略に乗せられています。

 

 配信サービスで80年代の相米慎二と大林宜彦の作品をボタンひとつで見比べることができるなんて、映画好きにとっては夢のような時代です。

 

 僕は、とりわけ、60年代の邦画コメディーを好んでチェックしています。

 

 森繁久弥の「社長シリーズ」、クレージーキャッツの「作戦シリーズ」は、ノリが軽くって、オチが緻密で、笑いの間合いがとても上品で、その時代を知らない僕にも懐かしく感じます。

 

 植木等、三木のり平、ハナ肇、谷啓、フランキー堺、当時の中年おじさんは、とても無責任で知的で粋なんです。

 

 

 とりわけコメディー俳優では、ジャズドラマーでもあるフランキー堺さんがダントツで面白くて、オシャレなんです。

 

 70年代生まれの僕と同世代の皆様には、フランキー堺さんと言えば、1980年から12年間続いた法廷テレビドラマ「赤かぶ検事奮戦記」で事件の真相を解き明かす名探偵的な検事役でお馴染みですね。

 

 

 刑事コロンボみたいにボヤく、それも名古屋弁で、いぶし銀の渋い俳優、晩年のフランキー堺さんが僕のイメージです。そう言えば、いかりや長介さんや志村けんさんも、ミュージシャン出身のコメディースターで晩年は渋い俳優でした。

 

 若い頃の堺さんは、紅白歌合戦の出場歴があるミュージシャン(ドラマー、歌手)なんだそうです。

 

 

 

 

 フランキー堺さんと言えば、1959年の映画『私は貝になりたい』でのBC級戦犯死刑囚役のシリアスで重い戦争映画のイメージが強いですが、コメディータッチの戦争映画にも出ています。

 

 喜劇的な戦争映画とは、生と死の狭間の重たい反戦映画とも違って、美化された戦争のヒロイズムを皮肉たっぷりに笑い飛ばす作風です。

 エリート軍人の馬鹿げた命令に従わずに、アウトローな二等兵たちは、戦場では酒と賭博、喧嘩に明け暮れ、我が道を行く。そんな映画です。

 

 

 このジャンルでは、勝新太郎主演、増村監督の『兵隊やくざ』シリーズと佐藤允主演、岡本喜八監督の『独立愚連隊』シリーズが60年代に大ヒットしました。

 

 当時のことですから、映画タイトルが、“愚連隊”とか“やくざ”とか厳つくて凄いけれど、それよりも役者が厳つくて精悍で、いかにもアウトローらしい怖い顔つきで喜劇を演じる。

 北野武監督の「アウトレイジ」でヒリヒリする怖い漢たちが時々に笑いを誘うみたいな感じです。

 

 暴力と笑い、緊張と緩和、そのギャップに惹かれます。

 

 さて、本日は1960公開の岡本喜八監督、加山雄三主演の『独立愚連隊 西へ』をご案内します。

 

 舞台は太平洋戦争末期の中国大陸北部、陸軍上層部の無謀な作戦指揮により第436陸軍小隊が全滅する。そして、旭日軍旗が敵の八路軍に奪われる。

 

 この失態を隠す為に、指揮官は軍旗奪還の為に大量の兵隊を前線に送る。

 しかし、中国八路軍の兵力は日本軍の数倍を上回り、奪還作戦は失敗が続く。

 

 

 エリート軍人は、大儀を振りかざして、歯が浮くような美辞麗句で前線部隊を鼓舞するが、無残な敗戦には結果責任を取らない。

 「兵隊の命よりも軍旗を重んじる」権威主義と勘違いプライドには腹が立つ。

 

 そして、失敗続きの奪還作戦の最終手段として、不死身の部隊『独立愚連隊』が招集される。

 

 左文字少尉(加山雄三)が率いる『独立愚連隊』は、北支戦の最前線で奮闘し、幾度の戦闘で部隊の戦死者を出した事がない。

 

 このことから、不死身の部隊「immortal squad」と恐れられている。

 

 

 さらに、隊員は陸軍登録名簿では戦死したことになっており、この名簿上に実在しない“幽霊部隊”はどの陸軍師団にも属さないことから『独立愚連隊』と呼ばれている。

 

 戦死者を出さないジンクスには理由がある。左文字少尉は上層部からの無謀な命令に対して面従腹背で、戦場では決して危険を冒さない。

 

 独立愚連隊はいつも明るく、冗談混じりで、のらりくらりで、戦闘は安全第一で、誰も殺さず、だれも死なずに帰還する。

 

 そして、独立不連隊は軍旗奪還に出陣する。

 向かう敵は、梁隊長(フランキー堺)が率いる八路軍。

 

 

 

 ここから、コメディータッチの手に汗握るアクション映画が始まります。

 

 『不真面目』な戦争映画の最高峰です。

 

 気高いエリートの権威主義をアイロニカルに突き、普通の人々の友情に胸が熱くなる、泣いて笑っての新喜劇です。

 

 続きは、是非に本作をご覧ください。

 アマゾン・プライムでも配信されています。

 

 兎に角、兵隊の役者の顔つきが良い。

 

 佐藤允、天本英世、堺左千夫、フランキー堺、三枚目の俳優陣の演技がとぼけていて、瑞々しくて、なんとも言えない魅力。

 

 彼らがじゃれあいながら歌う歩兵軍歌『独立愚連隊マーチ』はレコード化されていて、その歌詞は秀逸です。

 

 

 「日本のいちばん長い日」、「殺人狂時代」、「江分利満氏の優雅な生活」など岡本喜八監督の特徴であるスピーディーなカット割り、セリフが多い会話劇(早口すぎて聞き取れない)の技法は、その後の多くの映画監督に影響を与えています。

 

 ちなみに、エヴァンゲリオンの庵野秀明監督の師匠は、岡本喜八です。

 

 それでは、また来週まで。

 おやすみなさい。