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2020.12.08

<映画:英国王のスピーチ> #トム・フーバー監督 #コリン・ファース主演 #ジェフリー・ラッシュ助演 #ラジオと王室 #ジョージ6世とジョン・レノン

タイトルが入ります

 

 こんばんは。

 No Cinema, No Life.

 火曜日担当のツノムラです。

 

 唐突ですが、AI(人工知能)って世話焼きですが、嫌いではないです。

 

 例えば、アマゾンのAIは、気が利いたホテルのコンシェルジェみたいに、年末に何を買うべきかを助言してくれます。

 


 

 「来年の手帳」を買い忘れていませんか?

 「角田光代さんの新刊が出ましたよ」とか

 「アイリッシュ・ウィスキーのJAMSON新作が出ましたよ」とか

 「掃除機の紙パックをそろそろ買い足したほうが」とか

 


 

 このアマゾン先生の助言を受け入れ、これらアイテムを注文しました。

 

 

 きっと、僕は年末に大掃除をして、来年の予定を手帳に書き込み、JAMSONのオンザロックを飲みながら、角田さんの新刊を読みふけることになると予感します。

 

 アマゾン先生の提案は的確で、僕の近未来を予見し、僕はその提案に従う。

 自分自身が安直な機械人間(Automatic for the people)になり下がっているのは分かっているのですが、便利なもので、あえて反抗はしません。

 

 しかし、グーグルのAIは少しばかり、僕の個人領域に踏み込みすぎる気がします。

 

 例えば、たまたま先週に本ブログでネットフリックスの英国王室ドラマ「The Crown」の事を書くために「英国王室」をキーワードに検索していました。

 

 するとその後の、今週一週間は、グーグル先生は「英国王室」の情報ばかりを僕のグーグル・ホームに挙げてくるのです。

 


 

 「エリアベス女王の愛犬が亡くなった」

 「宮殿スタッフが王室私物を盗んでネットオークションに出品して逮捕された」

 「女王がメーガン妃の暴露本を激無視した」とか、

 


 

 興味のない情報を僕のスマホに挙げてくる。

 はっきり言って「知らんがなっ!」です。

 

 しかし、先先代の国王「ジョージ5世は切手収集オタクで他は無能だった」、先代の「ジョージ6世は内股がひどく矯正ギブスをつけていた」とか悪辣なゴシップ週刊誌のような情報には何故か反応し、熟読してしまいます。

 

 秘密は蜜の味、僕はゲスの極みです。

 

 そうなると、俄然にエリザベス女王以前の戦前の王室が気になりました。

そこで、アマゾンプライムが配信している「英国王ジョージ6世の素顔」と「英国王のスピーチ」を鑑賞しました。

 

 

 本日は第83回アカデミーの作品賞を受賞した2010年公開の『英国王のスピーチ』をご案内します。

 

 監督はクリストファー・ノーランと並ぶ若手ホープのトム・フーバーです。主演はラブ・コメからシリアスまで幅広い演技力のあるコリン・ファース。

 助演はオーストラリアの名優ジェフリー・ラッシュ、助演女優はヘレナ・ボナム=カーター。

 全員がアカデミー俳優賞の受賞経験があり、とにかく演技が上手い映画です。

 

 先週のブログでも書いたのですが、英国王ジョージ6世の兄であるエドワード8世は、1936年の即位から一年足らずで、王位を放棄し、退位した。

 

 理由は、アメリカ人女性との不倫である。その女性はソビエトのスパイとも繋がっていたとの情報もあり、安全保障と道徳感の両面から英国政府とイギリス国教会から促され、エドワード8世国王は国外追放となった。

 

 映画の冒頭はエドワード8世の王位放棄から始まる。

 

 

 前王の退位後に、残された王位継承者は弟のジョージ6世のひとりきり。新国王は即位を前に泣き崩れる。

嬉し泣きではなく、国王になる自信がないと妻のエリザベス妃の膝に泣き崩れる。

 

 一番の問題は、国王のスピーチにある。

 幼少からジョージ6世は吃音に悩まされ、人前で話す事を躊躇してきた。

 

 1927年以前、国王は国民に向かってスピーチなどする必要はなかった。

 

 国王は髭を蓄え、猛々しく馬に跨り、新聞記者がその姿を撮影し、国民は朝刊から威厳ある国王のメッセージを読めばよかった。

 

 しかし、1927年は英国王室とメディアの関係が圧倒的にひっくり返った。

 

 1910年代は、ヨーロッパの王室が打倒され、国家統制が共和制や社会主義に移行して時代である。

 王室は、国民に対する「人気取り」をしなければ、いつ立憲君主制の不要論が高まってもおかしくない。そして、共和制への革命が起きるかも知れない。

 


 

◆ロシアでは、1917年のロシア革命により長く続いた君主制は社会主義に取って代わり、皇帝ニコライ2世は追い出された。

◆ドイツでは、1918年のドイツ革命で帝政は打倒され、ヴィルヘルム2世はオランダに亡命し、ドイツは共和制へと移行した。

 


 

 さらに、新しいメディアが生まれた。『ラジオ放送』である。

 BBC放送協会がイギリス全土にラジオ放送ネットワークを完成させたのが、1927年である。

 

 映画の中で、当時の英国王であるジョージ5世は自分の立場を皮肉めいて嘆く。

 

 「我々王室は、馬にまたがって写真を撮られるだけの時代は終わった」

 「マイクの前でラジオの向こうの国民に媚びなければならない」

 「我々は芸人の才能を身につけなければならない」

 

 劇中ではジョージ5世のラジオ・スピーチはとても明朗で上手い(演じるのはハリー・ポッターのダンブルドア校長こと、マイケル・ガンボン)。

 

 しかし、新国王継承者のジョージ6世は、ラジオ・マイクロフォンの前で、一言も発することはできない。緊張と汗、たじろぎ、人前で喋ることができない。

 

 

 彼の吃音が原因である。

 王室はあらゆる医療メソッドで、新国王の吃音を治療するが、出口が見えない。

 

 そんな折、オーストラリア人で、ロンドンで言語障害のクリニックを開業するライオネル・ローグと出会う。

 

 言語聴覚士のローグの治療メソットは、心理学的なアプローチである。

 つまり、吃音は先天性ではなく、後天的な心理ダメージにより発生したものだから必ず治療改善できるとジョージ6世を勇気付ける。

 

 そこから、ジョージ6世と王妃エリザベス、主治医ローグの3人の言語治療が始まる。

 

 

 ここから先は、是非に本作をご覧ください。

 2011年のアカデミー作品賞を受けだけの価値があります。

 

 とても微笑ましい実話です。

 ジョージ6世とローグは生涯の親友関係でした。

 

 本作は、1980年代に映画化の打診が英国王室にありましたが、当時にまだ存命されていたエリザベス王妃(クイン・マザー、現エリザベス女王の母)が強く反対し、脚本がお蔵入りとなりました。

 

 3人による治療は本当に大変で、当時の事を思い出したくないし、世間に知られたくない、という王妃へのインタビューがあるそうです。

 

 

 言語聴覚の治療に取り組んだジョージ6世は、戦時下の国王で心労が多く、1936年に56歳の若さで崩御なされます。

 

 凡庸と言われたジョージ6世は、家族を愛し、派手を嫌い、質素倹約で真面目、国民と共に歩む王室公務を確立した新しいタイプの国王です。そして、その娘が現在のエリザベス女王です。

 

 ビクトリア王朝以降、国民から最も愛された君主と言われています。

 スピーチのラジオ音源が残っています。肉声も素敵です。

 

 英国といえば、今日、12月8日はジョン・レノンの命日です。

 

 1940年10月9日生まれのジョンは、存命であれば今年80歳。

 1980年のニューヨーク州のダコタ・ハウスでの暗殺から40年。

 

 もし、ジョン・レノンが生きていれば。

 このテーマについて、9月のブログ「映画:イエスタデイ(ダニーボイル監督、2019年公開)」で書きました。

 

 Let’s take a chance and fly away somewhere.

 Starting over (over and over and over)

 <誰もがやり直すことができる(何度でも、何度でも)>

 

 今日は、ラジオで一日中をジョン・レノンの歌声を聴いています。

 

 LOVE and PEACE

 

 それでは、また来週まで。

 おやすみなさい。